設計事務所の関わる仕事として、
施工業者から提出される見積書のチェックという業務があります。

その見積りの前提として、
新築であれば、
数十枚の図面に、現場説明時には補足資料を付けます。
又、リフォームの場合は、
その工事の内容により図面枚数は大きく変わり、
新築の場合と近かったり、半分だったり、
少ない場合は10枚程度の時もありますが、
正確な見積りをして頂くために、
新築同様に現場説明時に補足資料も付ける事になります。
それを元に、施工予定業者に見積りを実施して頂く形となります。

そんな見積書に関連して、
ケースとしてはとても少ないのですが、
時として、見積書のチェックだけを依頼される場合があります。

そのようなケースでは、
その見積りの元になっている図面等の資料も数枚、
そして見積書を眺めても、記載事項が曖昧・・・という場合が多く、
そうなると、チェックに必要な工事内容の把握が
きちんと出来ないことになり、
「申し訳ないけど、ある程度の大雑把なチェックしか出来ませんよ」
とお答えするしかありません。
その答に、多くの場合、相手の方は
「何故!?」と不思議そうな顔をされます。
その方の頭の中は『この見積書のチェックが出来ない? どうして?』
と混乱状態にあると思われます。

そんな相手に、私は既に終わった物件の設計図をお見せして、
「この位描いてないと、正確な見積りは出来ないんですよ。
更に言うと、これだけ描いてあっても、見積り上完璧かと言うと、
そうではなくて、業者が見積りする場合には、
その作業中に幾つかの質疑応答のやり取りもあって、
それで何とか正確な見積りをしてもらうんですよ」とお話しします。

そして、重ねて言います。
「私はこの見積書にけちをつけている訳ではありません。
この見積りをした業者の方の頭の中には、
今見て頂いている図面と同じ様なものがあるんだと思います。
しかし、それはその方の頭の中にあるのであって、
第三者の私やあなたがその全部を見る事が出来ないという状態なのです。
ここにある図面だけで分かるのは、そのほんの一部分だけなので、
もし、その方の頭の中の資料を見せて頂ければ、
喜んできちんとしたチェックをさせて頂きます。
もちろん、先程も言いましたように、大雑把で良ければ、
それなりのチェックは致します」と。

見積書をチェックする時、
実はチェックする《元となるもの》がとても重要なのです。
いくらプロであっても、曖昧模糊としている状態では、
正確な《チェック》はとても出来ないのです。