30代はよく飲み歩いたものだ。

 趣味は?の問に「酔って夜空を見上げながら家に帰ること」と答える。それが趣味と呼べるかは甚だ疑問であるが、外にこれといって見当たらない。なんといっても鼻歌まじり帰るのは気分が良い。しかし家が近づき玄関灯が見えると背筋がピンと伸び酔いがさめる気がする。それは玄関灯の力である。

 我が家では普段、夜半に玄関灯は消す。しかし誰か外出中で帰宅予定の時や来客予定の場合は点灯しておく。もちろん消し忘れの場合もあるのだが。

 玄関灯は「待ってます」のサインなのだ。家族はそれを知っている。
 そうすると、鼻歌まじりの千鳥足でそれを見ると「ちょっと飲みすぎたかなー」などと思ってしまうのである。一種の条件反射であろうか・・。

 最近の玄関灯は普段20%点灯で近づくと100%点灯するなどと一見便利な機能が付いているのだが、帰宅が遅くなった娘に「ちょっと遅かったかな~」と思わせる機能は付いていない。便利なのだけれども、ちょっとしたでもけっこう大事な部分に落とし穴があるように思えてならない。
 家人がスイッチを押すか、自動で点灯するかは大きな違いがある。そこには人の意思が存在するからだと思う。

 玄関灯をあったかいものとしたい。設計者としては、どの辺りから、どんな灯りが、どんな風に見えるかはとても興味深いのである。