今回の住まいは鉄筋コンクリート造躯体と無断熱。
断熱性能を上げて、木軸で内装を創り出すことは、
スケルトンインフィルでのリフォームが前提となりますが、
問題は、それをどういった手法で創り出すかがポイント。

鉄筋コンクリート造躯体の断熱性能を上げるためには、
直接躯体に断熱材を貼り付ける手法が一般的ですが、
これだと、躯体の内部をできる限り広く使うことができるためですが、
今回のお宅は、元店舗の設計ということもあって、
土間スラブから天井スラブまでが、3.8mもあり
そこまで内部空間広く使う必要がありません。
また、古いRC躯体は、壁・スラブ共に垂直・水平があまく、
直接張りで、これを調整するのは手間が掛かります。

今回は施工期間も限られる中で、生産性を上げつつコストを抑えるには、
できるだけ施工のシステムをプレファブ化していくことが必要です。

RC躯体の中に、木軸を造る方法はたくさんありますが、
80歳のお父さんのために適度な内部空間を創り出すために、
天井高をあまり高く取らないで、小さく住まうことを考えました。
そうすることで、省エネにも繋がるわけです。

また、単に在来工法の木軸に石膏ボードを張って、
クロスや板張りでは、作業工程も煩雑になるので、
構造躯体がそのまま仕上躯体にもなる
静岡県産杉材Jパネルによる落とし込み工法を採用しています。
今回のJパネルは私の地元静岡県産杉材を活用した、
島田の丸天星工業さんのJPウォールです。
http://marutenboshi.com/jpwall.html

RC造のため、木構造躯体としての機能は必要ありませんが、
通常のJパネル厚36より薄い厚30ですみ、
パネル同士をダボ繋ぎできて、受け材が必要ないのが特徴です。
また、そのまま家具の造作にも転用がきく厚みとなるので、
材料の転用が容易となります。

Jパネルの躯体では、杉の120角柱を使用しますが、
33×20mmのしゃくりに落とし込み、
この時に両側にできる43.5mmの段差部分のRC側に
断熱性能の高いポリスチレンフォーム厚40を使用しています。

こうすることで、RC躯体に張り込むよりも手間が軽減でき、
木造躯体とRC躯体の間にできる空気層も
断熱性能をアップに寄与しますし、適度な広さの室内空間を造ることができます。

床部分は、120角桧材と構造用合板厚24とポリスチレンフォーム厚40
として、断熱材の厚みをそろえることで歩留まりをよくしています。

Jパネルの壁高さは、標準の910×1820パネルを2.5枚
910+910+450=2270mmが基準です。
半割を使うのは、もう半分を転用するためです。
床側は、構造用合板+フローリングの45mm
上部桁側は、15mmと60mmの呑込みがありますので、
2210mmが床仕上げから壁上端の高さとなります。

高さが少々低いと感じるかも知れませんが、
今回は、桁にも杉120角を使用していますので、
実際の天井高さは、仕上げ材を除いても2324mmありますので十分です。

ただ、今回は天井スラブとの高さの関係から、
910mmの標準Jパネルを上から差し込むことができないので、
上部を300mmカットした溝を建て方に応じた箇所に設けて
横入れができるようにしています。

こうした設計をする場合には、建て方の順番であったり、
Jパネルの番付、出荷、搬入の順番など、
設計するに当たって、施工者との意思疎通が重要となります。
構造模型による確認、軸組図によるJパネルの加工確認、
Jパネルの番付と供給業者への見積依頼と歩留まりチェックなど
設計側でこれらの図面を描いて、打ち合わせを重ねることが必要なので、
この辺りの労力は相当な量となりますが、
生産・搬入・施工をシステム的にかつ、スムーズにおこなうためには、
重要な作業となります。

このように、Jパネルを使用した住まいの設計には、
設計サイドの図面を元にして、生産業者さんとの打ち合わせ、
構造模型によるプレカット加工や建て方順序、
出荷・搬入・建て方の順番を考えた梱包と番付などなど、
設計→生産→出荷→搬入→建て方それぞれの段階での
図面を元にした意思疎通が重要なカギとなります。

こうした作業を面倒とみるか、面白いとみるか、
それが設計の資質に通じることかも知れませんね。

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