老朽化した小田原市民会館を建て直すべく、前市長の小澤氏が「(仮称)小田原城下町ホール」の建て替えコンペを開いたのが、今から3年前の2007年。大小合わせて238の設計事務所がプランを提出し、すったもんだの果てに選ばれたのが、山本理顕設計工場の計画案でした。

ところがこの案、いろいろとアグレッシッヴなコンセプトの元に考えられていたので、コンペ当選後から彼方此方で異論が噴出していたのです。またその頃には市の財政が驚くほどの急降下。まぁ、これはどこの地方都市でも同じ現象なので、何も小田原だけに限ったことでもないのですが・・・。

凄く話を端折っていますが、そんなこんなのタイミングで市長選の公示。
前市長が引退を表明したことをきっかけに、ホール推進派と見直し派の対立にも見えたこの選挙。
小田原市民ホールの計画見直しや、その他のビッグプロジェクト(小田原にとってはと言う意味)の反対を表明した加藤さんが、見事新市長に当選。そして昨年の4月には正式に、市民ホールの計画地事体から見直すことが決定。当然設計も一からやり直し。

この動きに異論を挟んだのは勿論、山本理顕設計工場。
そりゃそうだ、だって実施設計は既に終わっているんだからね。当然、設計した建物を建てたいと考えるのは、世の建築家・・・とまでは言わなくても、私の如き建築士さんレベルでも気持ちは一緒。
さてどうしたものかと、先月の18日に小田原市長とのヒアリングが行われた。

このヒアリングは公開だったので、行きたかったのだが、残念ながら仕事で行けず。
その時の様子を、某HPで読んだのだが、予想通りに話は平行線だった模様。
加藤市長の締めの言葉として、新たな計画地に新たな設計をするとのこと。2014年の秋までには完成させたいと言う考えらしい。


設計の仕事に携わるものとしては、山本氏の考えは至極真っ当と納得するが、でもその建物をこれから一生使う小田原市民としては、微妙な気持ちが無くも無い。
コンペの様子を見ていたので、個人的には山本氏のプランが採用されると思っていなかったし・・・。
そういう意味では、山本氏のプランを採用した当時の選定者に、問題があったのかもしれない。

この問題、まだまだ尾を引きそうな感じだが、市に金が無いことだけは確かだし、造った建物がどうであれ、それを抱えていかなければならないのは、間違いなく小田原市民。
たぶん一番大事なのは、そこじゃないかと思う。
まだまだ目が話せない問題ですが、今後の動向を見守りたい。
ちなみに実施設計までの費用1億5750万円は、既に山本理顕設計工場には支払い済み。


天工舎一級建築事務所