都市型住宅には

コートハウスというデザイン手法があります。

雑多な都市環境のなかで、

周囲から隔絶した中庭空間を部屋や高い塀で囲い、

中庭に面して開放的にするのです。

外部、町並みに対してきわめて閉鎖的な表情となります。

この中庭の中央あたりに木を植えたりすることが多いでしょう。


ところが木はどんどん成長してやがて樹、巨木にもなります。

または、囲われることで根周りの風の抜けが悪いことで、

何年か後には枯れてしまうでしょう。


家相や風水でも屋敷の中に囲うようにして

木を植えることは凶とされています。

その考えをあらわしているのが「困る」と言う漢字です。

困るのは住人だけでなく木にとっても同じです。


さて、PDO(www.passivedesign.jp)の拠点のある高原から夜景を楽しむ甲府は、

町並みの形成に計画性というものがなかったようです。

狭く入り組んだ道、汚れた水路。

家並みに統一性もなく

「愛する街」と呼ぶにはいささか難有りです。


甲府を森にしたい。

埃っぽい冬風、重い夏風、どうにかしたい。


そこで、ひとつ家をつくったら必ず大きくなる木を一本植えるのです。

ただし、100年後のことを考えて植えなくてはいけません。

困ったことになるコートハウスの中庭に植えるのはだめです。


「困」のかこいの一方を開放してやる。

「区」と言う字の「メ」を「木」に変えてみます。

「きだく」と読む、木を抱くという意味の漢字が出来ました。


木が家というシステムの一部となるように、

木が家族の歴史を刻む一員となるように、

そして木を抱いた家は町並みとなって甲府は森になります。null