ご卒業のみなさん、本日はおめでとうございます。

皆さんの中には、これからの道が決まっている人、

思う様にならず落ち着かない人も、

そして、居直ってゆっくりとかまえている人も

いると思います。それでも今日ばかりは、

今この場にいる幸せをかみしめて

とても充実感にあふれた良い顔をしています。


さて、あらためて「デザイン」とは何でしょう。

この根本的な問いは今の皆さんにとっても、

私のように今までやってきて

これからもデザインをつづけていこうとしている者にとっ

ても、常に問いつづける重要なことです。


だれかがあらかじめ作ったハードをどう包むか、

どう表面を覆うか、いわゆる美的表面処理が

「デザイン」と勘違いしている一般の方々は

やはり多いようです。


世の中には情報があふれて、見た目に整っているもの

上手に処理されているもの、そうしたものが

身近にたくさんあるおかげで今の人たちは

私がデザインを始めたた時代より格段に

造形、美的処理がウマイ!と思わせることが

多くなりました。何の訓練を受けていなくても

PCを駆使して一定レベルまで出来てしまいます。

でもそれらは「デザイン」のほんの一要素でしかない

表面的なものが多いと思います。


カラカラに乾いたスポンジに水が浸み込む様に

最も多感な時に、体で造形とは何かを身につけた

みなさんは、今はまだうまく言葉やデザインで表現

出来なくても、デザインの本質を見出す

潜在力を身につけていると思ってください。


桑沢はかって即戦力を売りにしていた

時代がありました。現代社会がデザイナーに

求めるレベルはとても高いものになりました。

単に表面処理や小手先の器用さで作られるものは

すぐに飽きられてしまいます。大きな視点に立って

社会をリードすることを求められている、

ということです。みなさんはこれから、

プロの、長いデザイン道に緊張感をもって

入ってきてください。


終わりに少々難解なことを言います。

デザイン技術は人のためだけ、人を幸せにするため

だけでなく、人と横並びにあるすべてのものや、

いきものを幸せにしなければならない時代に

入ったのだということを覚えておいてほしい

と思います。


みなさんの健闘を心からお祈りいたします。

がんばってください!

                3月22日祝いの言葉