盆地を北に見下ろす、

古い集落と湧水のせせらぎ、

そして桃の果樹園に囲まれた里山にある。

古い民家に共通のデザインボキャブラリーを取り入れ、

場にふさわしい表情ができた。

外壁は藁入りの土塗り壁と

杉板に古色塗りのコンビネーション。

屋根はいぶし銀色のたちはぜ葺き。


家主は、各地の名刹を訪ねては

採取したもみじの種から苗作りをし、

樹に育て上げる趣味を持つ。

高じて、市街地の小さな庭ではどうにもならなくなった。

「もみじとともに暮らす家」 それがご主人唯一の要望だった。
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芽吹きが待ち遠しい、

冬の日の引渡しだった。