見積書のチェック(1)で、
《チェックする元となるものが大切です》と書かせて頂きました。

今回はその事について、少し具体的に書かせて頂きます。

例えば、図面資料の中に、基礎に関する図面が全くない場合があります。
見積書を見ると、基礎工事の項目があり、
布基礎(逆Tの字型の基礎)の長さが記入されていて、
そこに単価があり、
この物件の布基礎工事の金額が明示されています。

この見積りでは、一見きちんとした見積りに見えますが、
①布基礎の長さの根拠が分かりません。
②単価は明示してありますが、
 その単価がどういう内容で成り立っているのか分かりません。

①の長さについては、基礎の図面があれば、
少なくてもその長さは的確にチェックする事が出来ます。

②については、この単価からだけでは、
基礎の形状も、鉄筋がどんな風に入っているのかも分かりません。
何かの品物単品の単価であれば、話は単純ですが、
この場合の長さ当りの単価は、
色々な要素が積み重なって出来ている訳で、
一つの結果としての数字ですので、
その根拠がはっきりしないと、単なる「数字」でしかありません。

この布基礎の部分の金額が仮に100万円だとすると、
これは第三者的に見ると、全く根拠のないものとなってしまいます。

図面資料が少ないと、
色々な部分で根拠が乏しい見積りとなっていると想像ができます。

このような見積書は、
第三者的な根拠が乏しい訳ですから、
目では見えませんが、『我が社を信じて下さい!』と
裏に書いてある見積書という事になります。
それを承知で、「はい、信じましょう」と
数千万円の工事を契約すれば、
これは、その時点で一つの「根拠」を持った見積書と化します。

そして当然の話ですが、建物が完成した時点で、
その見積書が、その内容の通りに実行されたのかは、
見積書を作成した本人しか分からないのです。
いくら建築に詳しいプロでも、
はっきりとそれを確認する術はありませんので、
数千万円のお金を支払う方は、
その見積書を「信じる」しかないのです。