進行中の住宅には、どの家にも畳の敷かれた部屋が設けられています。
いずれの家も、寛ぐための場所に畳が敷いてあります。
言ってみれば、「リビング」ではなく「茶の間」があるということ。
だからソファなど置かずに、畳の上に座して寛ぐ。なかには「掘り炬燵」のある家もあります。

そんな畳の敷かれた空間は、他の場所との間に仕切り壁や扉を設けていません。
ある家には段差があるだけ。つまり茶の間と台所の境目は、床の高さの違いだけ。もう少し建築的に言えば、視線の高さの違いだけで、その間に扉などは無い。

またある家の茶の間と台所の間には、一枚の壁が立っているだけ。
壁の右側も左側もOPEN。ある意味、衝立が立っているようなイメージで、その衝立壁が二つの空間を緩やかに仕切っている。
また、小さなお子さんが居る家では、3畳ほどしかない畳空間に、段差さえ設けていない。これはこの畳のスペースが、小さなお子さんの昼寝をする場所でもあり、遊び場でもあるために、転落などの危険を避けたかったからだ。そんな小さな畳スペースとリビングの間に設けたのは、一枚の薄い長押のような物。ふつうなら鴨居を設ける位置に、小さな梁のように壁の端から端へと渡した板状の物。二つの空間を仕切るのは、たったこれだけ。

下の写真は以前、設計させていただいた家の居間と小上がりだが、写真右手の白い矢印が指している板状の物がそれと同じ。
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この板の後ろにはロールブラインドが隠れており、何かの際にはそれを下ろすことが出来る。それぞれの家で狙ったのは、いずれも緩やかに仕切ること。

小さく仕切ることは個室を沢山作れるが、必ずしもそれが良い事という訳でもない。
緩やかに仕切ることで、風や光が抜けたり、空間を広く感じることが出来たりする利点もある。

「空間が広いとエアコンが効きにくいのでは?」と心配される方が居るが、それは取りも直さず「夏は窓を締め、エアコンで涼を取る事が前提の家造りを考えてますよ」という事ではないだろうか。正直、もうボチボチ、そういう考え方から一歩進んでみませんか? と、思っちゃう訳です。

緩やかに仕切るということは、家族の声や気配やイビキや歯軋りだった聞こえちゃうかもしれないし、ひょっとすると夫婦喧嘩の声が子供たちに、丸聞こえになっちゃうかもしれないけど、それも含めて家族と違いますか? という考え方なんです。

そういえば障子という建具も、緩やかに空間を仕切る物ですが、あれは結構高性能な道具だと思います。断熱性、遮音性などは下手なカーテンなどよりも、ずっとハイスペックだし、ちょっと手を加えれば猫目障子や雪見障子のように、閉めたまま外を見ることも出来たりします。それに最近は、ワーロンのように破れにくい障子紙などもあるので、いろいろ便利です。

予断ですが、少し前にワーロンのカタログと一緒に、手漉き和紙調のクリアファイルを頂戴しました。けっこうイイ感じだったりします(笑)
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こうした和の素材や感覚を好まれる方が、最近は増えてきているようです。「和モダン」なんて言葉が流行ること自体、そういった好みの変化を感じさせます。

「家は夏を旨とすべし」と言われた時代がありましたが、技術が進化し、気密化が容易に図れることにより、いつしか「家は冬を旨とすべし」に変わってしまいました。

でもね、やっぱり家は夏が基本だよね~~~と、思うわけです。

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