俳優が、いろいろな役柄を演じたい思いと、設計者が,いろいろな用途の建物を計画したい
思いは、共にチャレンジャーとしての苦労は伴いますが、思いの丈は同じだと察します。
この戸建住宅に求められた課題の一つは、双方の両親を引き取り共に暮らすという特異な
三世代住宅のあり方を、いかに未来的な指方性をもって立案出来るかでした。
静なるプライベートな空間は1階部分をそれぞれの両親が過ごす場に、3階部分を施主夫妻
と子供が憩う場に決まり、サンドイッチ部分の2階が家族の集うパブリックな空間で、特に
「食事と団欒」をキーワードに施主夫人との度重なる話し合いのなか難産の末、小生にとって
初の「コ」の字型システムキッチンの誕生となりました。

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机上論では、このプランが動線上理想のタイプとされながらも「一人っ子」に終わった理由の
一つに、この家族が醸し出した執念に近いモチベーションでのやり取りしたシーンが、現在
に至るまで再度演じきれなかったところに在り、猛省する点であります。