知り合いに、調査捕鯨に参加している方が居る。
年頃の娘さんを持つ、ごく普通の方だ。

ひとたび仕事で出掛けると、長い時間、家族と会うことが出来ないそうだ。
ご本人は仕事に誇りを持ち、ご家族はそんな父親を誇りにしている。
きっと会えない時間は、他者が想像できないほどに、寂しい時間に違いない。

家族の願いは、父親が無事に帰国すること。
そんな家族の心を掻き毟るように、時としてTVから残酷な映像が映し出される。

「反捕鯨団体」が調査捕鯨船にレーザービームを当て、作業や進行を妨害する様子。
乗組員を船外に放り出さんと、加圧された放水をしてくる様子。
挙句の果てには、高速で自船を体当たりさせてくる反捕鯨団体船の様子。

それはまるで調査捕鯨船を、沈めても構わないとさえ、考えているような行動に見える。
その光景を目にした家族は、一体どんな思いなのか、想像することも出来ない。
自分が正しいと思うことの為ならば、どんな方法を使ってもかまわない。
誰が犠牲になってもかまわない。
何が何でも、どんな手段を使ってでも思想を貫き通す。
そんな思想行動を、人はテロリズムと呼ぶ。

自分の考え方を持ち、それを主張する事は大切なことだと思う。
生きている人全てが、大なり小なりの主義主張をしながら生きているのだから。
でもそれを他者に対して、恐怖で押し付けてはいけない。

鯨の痛みを推し量れる聡明さがあるのなら、人の痛みは、もっと簡単に分かる筈。
鯨を守りたいと思う気持ちが「愛」ならば、人を傷つけるのは止められる筈。

日本人が古来から大切にしている七福神の一人、恵比寿様は鯛を小脇に抱えている。
あの恵比寿様は、鯨を神格化させたものだと知っているだろうか。
日本の漁業に携わる人が崇める水神様は、鯨をイメージしていると知っているだろうか。
ひょっとしたら世界中のどの国よりも、古くから鯨に対して親近感を覚え
生活に溶け込み、重要だと考えている国は日本なのかもしれないことを
知っていてくれたら良いと思います。

天工舎一級建築士事務所