住宅を建てるには、二つの依頼の方法があります。設計施工システムと設計監理と施工を別々の組織が行う分離システムです。前者は、住宅メーカーや工務店であり、後者は設計(専業)事務所です。

近年、住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)融資住宅を建てる建築主が多くなり、分離システムに対する理解も得られるようになりましたが、まだまだユーザーは設計施工システムを選択し、設計事務所よりも住宅メーカーに設計依頼されることが多いのではないでしょうか。
住宅設計中心では経営基盤を成立たせるのは難しく、住宅設計に積極的に関ろうとしない設計事務所が多かった事も要因の一つでした。

さて、阪神淡路大震災以後に建てられた新築住宅から多量の室内空気汚染物質が検出されてシックハウスという言葉が普及した後も、俗に言う「欠陥住宅」を見聞きする機会は後を絶たず、その後も建築基準法の改正や住宅新法(性能表示制度等)の制定などが行われましたが、建築主と業者との間のトラブルは一向に絶えそうもない現状です。

今まで真面目に取組んで来た設計事務所や工務店にとっては、大変迷惑な状況になって来たのです。
昨年は、耐震偽装事件により設計者の社会的信用も地に落ちました。それがきっかけに改正された建設三法は、実務者に責任を強いるものとなっています。

建築工事費が安いから、手抜きや欠陥工事があるとの一般論がありますが、私の裁判での鑑定人の経験からいうと、そうではありません。元請業者は、正規の又はそれ以上の請負金額で契約していながら、下請け業者への発注は、とことん絞り切るのです。下請け業者は手抜きをするか、能力に劣る業者か、ということになるのであって、更にそれを指揮監督する元請も、まともな監理が出来ていないのが原因です。

設計者に限らず工務店の技術者然り、職人さん然り、創造的仕事をしている人は決して他人の為、社会の為と意識して仕事をしているのではないでしょう。仕事それ自体が目的となっているはずです。結果的にその事が社会的問題を含んでしまっているのです。設計者は、単に設計技術を持っているだけでなく、職能人としての誇りと文化の一翼を担う技術者として社会に貢献する気構えが大切です。私は、この様な認識に立ち住宅設計と(設計)監理に取組んで行きたいと思っています。これから住宅を建てようとお考えの皆さん、一緒に家づくりをしてみませんか。