昨年おいらも受講した「京都市文化財マネージャー育成講座」の本年度の最終課題の発表会を見に行った。

京都駅から歩いて行ったもんだから、2つの班は見れず、3つ目の班の終わり際に到着した。
もう汗だく。

震災後の節電節電で、昨年は涼しかった会場も涼しいと実感出来るまでには冷房されていない。
確かに節電は必要なのかもしれないけれど、公共の施設で一般の方々を呼び込みたいのであれば、外に「冷えてます!」って書くだけで人は来るんじゃないかなぁと思うおいらです。
図書館しかり会場となった市民活動や福祉ボランティアを支援する役割の「京都市・ひとまち交流館」も同じ、こういう時こそ人を集めなきゃ。節電節電って言われてる今が人を集めるチャンスだと思うんだけどなぁ。
パンフレットも必要だろうけど、「涼しい」というだけで今は人は来ると思う。で、涼しさを求めて来ただけだとしても、その中の何人かが興味をもってくれれば、それで良いと思うのだ。

で、話はそれた。
この講座の話は昨年も書いた。「文化財マネージャー」と何か敷居が高くなってはいるけれども、現実には古くとも良いものは残そうっていう運動の一つで、その方法の中に「有形文化財登録」というものがあるだけだ。
だから、この講座の前身である「伝統建築保存活用マネージャー」の方が実態に則してるとは思っている。

京都駅前には、去年工事してた巨大なヨドバシカメラが堂々と建っている。そのすぐ裏には町家を改装した居酒屋さんとかが並んでたりするのだ。現実は毎年というか毎週と何軒かの残したい建物が解体されている。所有者は単に古いとか狭いとか使いにくいとかっていう理由で解体されてしまうのだ。
普通に売ればかなりの確率で簡単に解体されるし、そもそも今の不動産流通には古い建物の価値なんて評価は無いのだ。もっと言えば、土地にとって上に建っている古い建物はお荷物なわけだ。

上記の講座では、修了課題も含め3回ほどの実地調査とそれぞれの報告書を作る。半年で8班で24件だ。それに比べて解体されてしまう建物は数しれない。そこでおいらは思う。まず簡単に解体されないように、そして所有者にその価値を伝える運動をすべきだと思うのだ。幸い前身の活マネもふくめ講座修了者はかなりの人数がいる。

例えば、年1でもいいから町を散策し、景観に寄与している建物などを見つけ、メンバー3人が同じく残したいと思えば、その所有者に対して「貴方の建物は、景観に寄与するとても素晴らしい建物です。これからもぜひ残してください。建物の保存や維持管理でお困りの事があればお力になれると思いますので、ご連絡下さい」なんてものを会の名前でポスティングするって方法はどうだろうか。これは、京都だけでなく全国どこでも出来る。所有者に対して客観的な価値を伝える事が必要だと思うのだ。

上にも関連するが、昨日の発表で現在登録文化財であるヴォーリズ設計の「駒井邸」が個人では維持出来ずナショナルトラストに寄贈されている事を知った。駒井邸は本来住宅であるのだけれど、その前も今も人は住んでおらず「ただ保存されている」状態であり、現在も維持管理費用の捻出に苦労しているのだ。
建物に価値があり所有者も残したいと思っても、先立つものが必要なわけだ。言い方を変えれば、その良い建物が所有者を苦しめているわけだ。我々建築に携わる仕事の場合、第一義は建物が人を不幸にしないという事だとおいらは思っている。住宅であれば幸せの一つの形が家だと思っている。それが、保存となると建物が人を苦しめるのだ。

前述した様に、今の流通に載せればほぼ確実に解体されてしまう。
フランク・ロイド・ライト設計の住宅はとても人気があり100年近く経っていても価値を認められ、高値で取引され尚かつ住宅として使われ続けている。これは、価値を価値として認める人の中で流通しているからだ。
そこで、文化財マネージャーの一人のおいらが思う事は、上記の様な散策によって価値ある建物を見つけ、価値を知らせ、そして売買にも会が関与すべきだと思うのだ。文化財マネージャーがその建物評価をし、その価値を記し、その建物に保存する価値をプラスすることで、その建物は価値を認める人が購入してくれ、建物は景観とともに存続し続けると思うのだ。

こういった活動をしなければと発表を見ながら思ったおいらでした。