現在の日本では、世帯数よりも住宅の方が多い。

当然ながら、戸建てだけでなく共同住宅も含めてではあるけれど、人口増加も無い今は言い方を変えれば、新築する必要は全くないって事だ。

生命保険なんからライフサイクルなんて表を作ってもらう事があります。そのある意味未来予想図の上に住宅に関する部分だけを重ね合わせた場合、結婚当初の2人から家族としてスタートする。そして、子供が生まれたり親を呼んだりと家族数としてはピークを迎える時がある。その後は、親の死や子供の独立なんかで徐々に同居する家族数は減り、また結婚当初の2人に戻る。

こんな絵に描いたような一般的ライフサイクルの場合、おおざっぱに言えば2人で住む家と最大3世帯で住む家の2つあれば良い事になる。もちろん、それは自分の家でなくとも良い。
これも含めて現在の住宅ストックとしてはこの日本に十分にある。


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これは、先日京都に伺った時の写真だ。大文字が間近に見える坂のある閑静な住宅街だ。
この近くの家を訪問した。160坪もある敷地に100坪弱の昭和初期の家が建っている。何LDKなんぞというよくある表現が出来ない程の大きな敷地に大きな家なわけだ。この家の住人は現在2人。
家の状態はというと、あまり良くない。一部で雨漏りしているし、使っていない部屋の多くは開け放つ事が少ないからなのか、ちょっと湿気った感じがする。
で、現在は外に住んでいる息子さんからの相談で、何とかこの住宅を残したいと思っているし、自分たちももう一度ここに住もうと思っている。との事。

この息子さんの家族が一緒に住もうという気持ち、これが良い。そんなわけで現在改修を含めた計画を考え中。

うちの田舎の方でも、かなり大きな家に老夫婦2人っていう世帯は多い。また、その老夫婦がいなくなり空き家となったままひっそり佇んでいる住宅も少なくない。

さて、小学校の学区単位で見た場合、そのエリアにこんな家がどれぐらいあるだろうか。
自分の生活においてのコミュニティを含めて考えれば、これぐらいのエリアの中で自分のライフサイクルにあった住み替えが出来れば、とても住みやすいだろうと思う。それには、住宅の所有よりも住み替えをする事への意識の転換が必要なのかもしれない。

税法の違いなのか、アメリカでは住宅の所有は売るために買う。言ってみれば住宅は商品であるから、庭も綺麗にするし家のメンテナンスもする。所得が増えればより良い自分に合った住宅に住み替える。税法がネックなので日本の場合は、借家として貸すか売る事になるのだが、貸すにしろ売るにしろ家のメンテナンスはその家の価値を維持する為に必ず必要だ。にも関わらず、あまりメンテナンスされてない所は多い。

最初に書いたように、住宅は余っている。だから建てる必要は無い。
だが、ただ住宅を持っているだけでは資源の無駄でしかない。
だから、もっと住み替えをしよう。住み替えによって住宅ストックはメンテナンスされ、住み替えを前提にすると人は無駄な物を買わなくなる。
たぶん、これだけで住みやすくなるんじゃないかなぁと思う今日この頃であった。