卒後、設計事務所に入り社会人となった年、待っていたかの如く、設計依頼を受けた作品は実家でした。場所は京都の五山送り火の一つ左大文字が真正面に見通せる南北に長く走る、幅員が16間(29.2m)の西大路通りのほゞ中間地点で、朝陽が眩しい西側の歩道沿いにある。内容は現況木造瓦葺2階建住宅の1階ファサードの間口2間半一杯に取り付けられた4枚引木製ガラス戸を撤去し、ウナギの寝床方向の奥行2間半のタタキ土間の通路と応接事務スペースを、落ち着きのある不動産仲介業のオフィスにしろとのことでした。独断で図面化した外装は、壁をリシン掻き落とし仕上げで、向かって左端から出入り口となる1間巾の木製引違イ格子付ガラス戸を配し、残りの壁の中心に巾1間と高さ3.5尺の引違イアルミサッシをはめ込み、パラペットと下屋の瓦葺との納まりはカラー鉄板加工の谷樋などで処理し、内装は間口2間半の土間を通路と自転車置き場の1間に絞り、残る床は高さ15㎝の見切り框付のフローリング張りで、壁・天井仕上はクロス貼りにした改装工事だった。
 20140930-京都実家 1.jpg  それから28年後、同居していた母親の他界もあり、兄夫婦の家族が憩うS造3階建の店舗兼用住宅が産声を上げ、今年18歳の誕生日を迎えた青年ですが、墓参りのついでに立ち寄り元気な作品に逢うと、小生の過ぎ行く老化年月の速さを痛感するこの頃です。