2009年 10月の記事一覧

«Prev1Next»
09年10月30日 07時18分00秒
Posted by: hemlock
末娘が小学校の社会科見学で某ハウスメーカーの

工場見学に行ってきたようです。

工程フローのイラストのレジュメがテーブルの上に無造作に置かれていました。

んー、なるほど。徹底的です。

あらためてこうして見ると私が関わっている「住宅建築」とは、

まったく縁のない違う世界のもののように見えます。


私が先達から教わったことは、

建て主に最大限の敬意をいだくことで、

その人格をデザイン技術者たる建築家という器に入っていただくことで、

真に建て主の分身としての「家」をつくることに腐心すべし、

ということでした。


オートメションで均一、画一、大量に家を作ろうとする

ハウスメーカーの価値観は私が当たり前とするつくり方と

根本的に違います。

ハウスメーカーの家の全てが高度に工業製品化されたものではないにしても

同じ価値観のうえに立ったものです。

住環境は完成品として与えられるもので創造するものではない、

とはなから思い込んでいる建て主にとっては、

好都合な選択肢なのでしょう。


私は娘に聞きました。

「それでどうだった?そういう家に住んでみたいと思った?」

「うるさくて、とても家を作っているようには見えなかった。」

それはそうですよね。ユニットを作っていたんですから。null
09年10月23日 07時18分00秒
Posted by: hemlock
隣の農家、といっても何百メートルも離れているのですが

例年ですともうすぐ霜が降りるので収穫はそろそろ終わりのはずなんですが、

今年は直売の市場が好評のせいか霜よけのハウスを大掛かりにかけて

まだまだやる気十分です。

おばさんは朝から花火をパンパン上げています。意外なことにおばさんは

花火上げが趣味、というわけではありません。

イノシシよけに効果があるそうなんです。

キツネ、タヌキ、シカなどほとんどの農家の敵は夜行性なので

朝からやって効果あるんでしょうか?今度聞いてみます。


さて、八ケ岳南麓には残念ながらクマがいないんです。

と私はこれから住人となる建て主に説明してきました。

クマの生息域は広大に必要でR20とR141に挟まれた八ヶ岳は島のようで、

クマの要求する生息域としてふさわしくない、と考えられてきました。

ところが最近クマ出没のうわさをよnullく聞くようになりました。

きのうばったり出くわした!とばかりに話す人に、

良く聞いてみると知り合いの、そのまた知り合いの話だったりして

どうもアヤシイのです。


そして最近、設計依頼をされたALT1200メートルあたりの森の中で、

大変なものを発見してしまいました。

どう見てもクマにしかできない深い鋭い爪あとが

ミズキの樹高さ1メートルのところに・・・・。

「やっぱり居るんだ!」

おもわず回りを見回してしまいました。

09年10月17日 07時33分00秒
Posted by: hemlock
秋も深まってきました。

日中と夜間の寒暖の差が大きいほど紅葉は美しくなります。

だから高原の紅葉は色鮮やかなのです。

ことにドウダンツツジの朱色は目を見張るばかりです。


この朱色を建築に使いたい。

このような彩度の高い色は面で使ってはいけません。

線で使うこと。

それが原則です。
DD色使い:朱色.jpg

建築が環境と同一化するためのデザイン操作として

朱色を使います。
09年10月10日 06時58分00秒
Posted by: hemlock
僕は小学生6年生のときクラスの仲間を誘って

野鳥研究会なるものをつくりました。

その当時の僕は野鳥に関しては博識で、

約200種くらいは識別できて

その生態や別名まで即答できました。

当時オタクという言葉はありませんでしたが

ようするにそれです。

日曜の度に目黒の自然教育園に出かけ野鳥を追っていました。

研究会では越谷のシラコバトや、野田の鷺山にも

行きましたっけ。


中学に入った頃、生録ブームがおこりました。

生録、ナマロク・・・・・。

なんてワクワクする響きでしょう。

SONY TC2800SD通称デンスケは僕の宝物でした。

5㎏もあるこのテープデッキをかついで

山から山へ、野鳥の声を、小川のせせらぎを、せみの声を、

生録するためにずい分出かけました。

薄明かりの高原の森の中で息を潜めて音を録る。

今でもそのときの空気感、緊張感を忘れられません。

家族旅行での僕は単独行動が多かったのでした。


そして今、鳥類は遥か昔に地球に君臨した恐竜たちの

後順応だということを知っています。

大気の酸素濃度が当時の2倍にもなる現代に適合するため、

恐竜は小さな鳥類に姿を変えて命をつないだのでした。


環境を好きなように変えてしまう人間。

人間は頭が良すぎて

進化も、順応もしないのですね。img-X06184116-0001.jpg
09年10月09日 06時18分00秒
Posted by: hemlock
急傾斜地に建ち、リビングルームが森に浮かぶ様に

ガラスを多用し、森の中間層部分をインテリアに

取り込んだ家をつくった。


地面に立ってこのリビングを見上げると

天窓のある天井がよく見える。

天井はフラットにしたい。


そこで障子を水平にはめ込み、天窓の光を拡散させる

光天井の設計とした。

からし色の和紙をポイントに使ったり、

組子のデザインを工夫して、

熱気抜きのために枡型の開口をいくつもあけた。

この孔から直射光が、室内を時の経過とともに

移ろいでいくのが楽しい。


光に生命を授ける手法だ。
09年10月07日 17時41分05秒
Posted by: hemlock
紅葉の名刹を訪ねては、そこを彩るもみじの種を採取し、

自宅の庭や玄関先で様々なもみじを育てる、

そんな趣味をお持ちの建て主が、

どうしてももみじの森に住みたくなってしまった。
三千院もみじの家上棟.JPG

ワイン愛好家がスクラップしているラベルのリストの

一つ一つについて克明に味の評価を朗々と語るように、

膨大な数のもみじのポット苗や鉢植えの一つ一つについて語る。

三千院のもみじの種をご夫妻で採取しているときに

不審者扱いされて追いかけられた話は面白かった。


ご主人の設計要望はひとつ。「もみじが似合う家」だった。

その家が先日上棟した。

私好みの無駄のない軸組みだ。この時点で美しくない建物は、

何をどうやったってだめだ。

古い集落のなかでよい意味で異彩を放つ。

細工は流々、仕上を御覧じろ。 
09年10月01日 23時11分25秒
Posted by: hemlock
合板は所詮合板、下地材程度と

思われている方は多いと思う。

しかしながら現代建築においてはもはや、

この合板抜きには成立しない。

構造強度も得られないし、釘の利く下地としては

欠かせないし、家具、建具も無しではあり得ない。


つい最近、合板を一切使わずに住宅を建ててほしい、

と要望された。それでいてQ1並の高気密、高断熱

もほしいと。真剣に悩んだ末、無理と結論した。


さて、私は合板が嫌いではない。

15年前に建てた自邸は、吉村順三をまねて

ラワン合板づくしとした。

ここ数年は米松板目(中杢柄)を好んで、

壁や建具に使っている。

かつては、定尺版を目透かし3ミリ、目地底に

同材の付き板、というのが定番であったが、

最近ではこの合板の断面が見えるのが

たまらなくいやになった。

そこで継ぎ目に目押し縁をする。

米松のあめ色と対比させてスプルースにしてみたり

赤く硬質のカリンにしてみたりする。

今度はアルミのジョイナーを使ってみようと思う。
«Prev1Next»