2009年 8月の記事一覧

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09年08月29日 07時18分00秒
Posted by: hemlock
八ヶ岳連峰の横岳稜線の西に大同心、小同心

と名づけられた大岩がある。

はじめてこの岩と対峙したのが21歳の春だった。

もう27年前。山は変わらない。

山キチだった亡き父もきっと大好きだったはずだ。

今年は3人の中学生を連れて八ヶ岳登山をした。

八ヶ岳には思い出がいっぱいに詰まっている。

09年08月28日 06時54分00秒
Posted by: hemlock
高冷地においての住宅の基本的な考え方は、

外壁、屋根の表面積を出来るだけ小さくして

寒気にさらされる面を最小にすることが求められます。


その意味で、いわゆる総二階建ての形態は不利です。

基礎面積の割りに空間容量が大きく、

坪単価が安くなりその点では有利です。

ただ、寒気にさらされる外壁面は大きいですから

温熱対策の点では出来るだけ避けたいのです。


単に西欧のスタイルをまねて2階をロフト型にしている

設計を多く見受けますが、理由を知る知らないでは

デザイン処理の深みが違ってきます。


さて、かつての日本家屋は夏の強い日射熱を

軽減するため、大きな不要空間たる

屋根裏を必要としました。

最近の断熱工法の進歩により、

その空間を居住空間として快適にすることが

可能となりました。

ネズミたちには不幸なことですが・・・・・。

今や、屋根のかたちはそのまま

室内空間のかたちになるのです。


ただ、そのままですと迫ってくる天井で

閉塞感があります。

そこで、視線の高さに設置する

開閉式の天窓を多く採用します。

これを北側に設けます。

それでも夏の太陽高度は直射光を室内に

入れてしまう場合もあるので、

慎重な検討が必要です。
09年08月22日 06時18分00秒
Posted by: hemlock
森の中では、人はとても心細い存在だ。

たった一人で道なき森に迷い込んだことが

あるだろうか。


山歩きを多くする私は、この八ヶ岳南麓から

見渡せる山という山ほとんどを踏破した。

けれども道に迷ったことはない。

それなのに、

もりにまよいこんだ・・・・・・・・。


ある日敷地で建築のインスピレーションを得ようと

集中しようとしている時だった。

梅雨明けしたばかりの日差しの強い日だった。

小指ばかりもある大きなアブが大量に

まとわりついてきた。

アブはとまられてから吸血するまで1秒ほどの

タイムラグがあるからその間に落ち着いて

手で払えばよい。しかし・・・・、

大量に来襲された場合なすすべがない。

針で刺された痛さ、そして後で腫れてくる。


たまらず森に逃げ込んだ。

倒木に躓きながら、

苔むした岩を避けながら、

気が付くと方向感覚を失っていた。

深い森で太陽が見えないから方位がわからない。

あせった。

久々に怖い思いをしたのだった。
09年08月21日 07時08分00秒
Posted by: hemlock
都会のビル型建築は「雨降り」という自然現象を

無機的なものにしてしまう。
 
水はどこから来てどこへ行くのか。実体感がない。

人は建築技術で自然をも克服できると

本気で思っているかのようだ。


屋根葺き材にはいろいろある。

瓦、スレート、金属板、ウッドシングル・・・・など。

でもすべて継ぎ目だらけだ。

なのに雨漏りしない。不思議だと思ったことがある。

水は、勢いを持って移動しているうちは

浸み込むことを忘れている。

しかし、いったん停留すると毛管現象で吸収を始める。

水の粒子の物理的特性だ。

吸水する物質の性質、飽和水量の問題でもある。

当たり前のことが理屈ではなく、

感覚として理解されていないと屋根のデザインは

できない。


屋根のかたちは、雨や雪から生活をどの様に

守り
たいかによって決まる。

また、屋根のかたち=室内空間のかたちだから、

それによっても決まる。

「建築は妥協の産物である。」とは林昌二先生

から教わった。

折り合い、バランスをとるのが建築家の仕事だ。


最近、片流れ屋根を何軒か手がけた。

1階から2階にかけての空間の一体的つながりを

表現したかったからだ。

天井を常に視覚内にし連続性を意識化する。

とても有効な手法だ。


ところが、日照調整機能、雨水処理に問題が出る。

日よけの庇デザインが必要になる。

また、雨水は一点に集中的に集まるから、

十分に検討された受け方と処理法が必要。


屋根のかたちは奥の深いデザイン要素だ。
09年08月16日 06時40分00秒
Posted by: hemlock
植物の葉はどうしてこうも多くの違う特長を

持つのだろう?

薄いもの、厚いもの、毛に覆われているもの、

ふちがギザギザのもの、つるんとしているもの、

本当に様々だ。

その理由は、その種が植生する環境の中で

どの様に、またはどれだけ太陽光を、雨水を得たいか、

葉からの蒸散をしたいか、によって違ってくるのだ。

よくよく観察していればそれらは環境に最適な

かたちになっていることがわかる。


私はミズナラの葉が好きだ。

本当によく出来ている。

原始的な力強さに満ちている。

非の打ち所のない造形とはこういうことを言うのだ。


そのミズナラの葉が立体的な層となって

西日を受けている。

逆光となり透ける光のなんて奥深くうつくしいことか。


自然のプリーツスクリーンだ。
09年08月15日 12時37分56秒
Posted by: hemlock
古くから森林の豊富なアジアでは紙の文化が育った。

日本や朝鮮では、この紙を建具に用いて

西欧のガラスのように使った。


雪深い地方の古民家を訪ねて、

障子と雨戸だけの開口部に新鮮な

驚きを経験したことはないだろうか。

障子紙は外気を遮断するだけでなく

光を透過、拡散させ熱交換機能もある。

桟の両面に太鼓張りすれば

大きな断熱効果も期待できる。


障子の格子は様々なデザインバリエーションを生んだ。

空間に連続感や緊張感を与えたり、奥行き感を

強調したりと、日本人の美意識の底を

流れている。


障子の一般的な使い方にとらわれず

独特の透過性を利用して様々な使い方を試みた。

そのひとつが「光行灯ブリッジ」。

吹き抜け空間の中央を貫く、

ブリッジ状の通路を障子で包んだ。

照明を巧みに組み込み、

大きな照明ボックス、光行灯にもなる。


ここを通る度、わくわくとした浮遊感を味わうことになる。
09年08月08日 07時08分00秒
Posted by: hemlock
わたしが活動のフィールドにしている高原では、

ログ派、ヨーロッパ田舎屋派、北米コロニアル派、

などどちらかというと既成のスタイルにはめて

建てたい人が多い。

そんな中で私のする、建て主のライフスタイル、

土地固有の要求を純粋に、忠実に

建築化しようとするモダンスタイルは

やはり少数派の選択だ。


北欧スタイルのログが大好きな一方、

コルビュジェのサヴォワ邸のような正統な

モダンも大好き、そんなむずかしい要求をする

方がいて、私に設計の声がかかった。


通常、ログを指向する建て主は間違っても

私のところには来ない。

仮に来ても丁寧にお断りするだろう。

ログの構造基準は、この国では研究が未開拓で

ヨーロッパのそれに比べて格段に

設計の自由度が低いのが現状と、

決めてかかっているふしはある。


しかしながら、この建て主の要求を満たすには

RC造とログの混構造となり、

軽やかに宙に浮かすことなど不可能なのだ。

じゃあ方法はないのか?


RC造とログの異なる質感が

バランスよく融合している・・・・。

そんな建築表現を模索した。


そして、直径6mのコンクリートシリンダーが

ログボックスを持ち上げて浮かしている、

というアイデアに至った。null
09年08月07日 06時18分00秒
Posted by: hemlock
のりくん家族は一年の大半を

標高2350mの山小屋で過ごす。

大自然に挑む登山家たちの拠点だ。

夏山シーズンともなれば若いスタッフと大忙しだ。


北海道出身ののりくんは目がきれいだ。

小樽の北一ガラスのやさしいランプのようだ。

奥さんのあきちゃんはカトマンズのまち娘のようだ。


小さな子どもたちももうすぐ小学校に上がることになる。

だから、あきちゃんと子どもたちは

里に下りなければならなくなった。


のりくんが小屋番をする山を北に見渡す、

風の原に家を造ることになった。
09年08月01日 07時15分00秒
Posted by: hemlock
豊かな自然のなかに建築をつくるとき

南や東、西でなく北方向にどうしても

室内空間に取り込みたい風景、

それも大々的にそうしたい景色があることが

度々あります。

寒冷地であればヒートロスを考えると、

季節風の吹きつける北面の開口部は

極力小さくするのがセオリーです。


室内から見て北側の景観は、

よほど遠景でない限り、太陽に照らされて

とても美しく見えます。逆に南窓からのそれは

逆光なわけですから眩しい上に、色は少なく見えます。


写真の家の場合、南陽に照らされた丸みを帯びて

美しい熊笹の斜面。そしてその下を岩魚の棲む

渓流があります。そのすべてを取り込むため、

妻壁の全てをガラスにしています。


ガラスの性能は日本でも近年著しく向上しました。

アルゴンガスが封入されて、金属樹脂が

内部コーティングされたROW-Eガラス。

予算さえやりくりが付けば、

こうしたガラスを用いて一般にはタブーな

北面のピクチャーウインドーも楽しめるのです。
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