桜井がまとめた君の好きだった曲のCDを聞いてます。あれから100日。
俺には君をイメージできるものが2曲しかない。きっと俺たちの接点が学生時代の一時だけだったためだと思う。

 それにしても、あの頃の俺たちは熱かったよな。酒なしで何時間も、答のないようなことを真剣に議論を重ねた。いつも喧嘩ぎりぎり。何年か前、同業の大場と「俺たちは大学で建築より人を学んだから、他の建築家とは違う物を造るべき」などと話したが、きっと君なら「また先輩カッコつけて、良いと思ったことをやるだけ」などと言い、また喧嘩になったことだろう。
 君は昔から豪快だった。女にはもてないが、男、特に後輩にはめっぽう人気があった。羨ましかったよ。しかし俺と同じに、思ったことをなんでも言うので嫌われていた面もあったかもな。
 リュックを背負い、トリスウイスキーをポケットに鈍行列車で旅した頃を忘れられない。あの頃は楽しかった。そう、日本中を歩いてる人とテントが隣同士になり意気投合したこともあった。少し臭いのが気になったが・・。朝市での貝を焚き火で焼いたのは美味かったよな。あの頃の写真を時々だしてるよ。

 大学を離れ、俺は家庭を持ち地域での生活を。君は独身のまま海外を渡り歩く生き方と、まったく違う道を選ぶ。昔のままの自由さが羨ましかった。あれから28年、その間会ったのは5回だっただろうか。2年前に胃潰瘍で血を吐いたと言ってたが、あれは胃潰瘍じゃなかったんだな。皆が学生時代より体が一回り大きくなっていたが、一人だけ昔のままの体形で一番健康的に思えたのだが・・。
きっと昔と同じようにアメリカでも、中国でも、シンガポールでも、スリランカでも、スペインでも大酒を飲んで周りを虜にしたんだろう。
本当はもう飲むべきじゃなかったんだよな。
 
 世界中を歩いてきた君が実家に戻り倒れるとは不思議だ。君が横たわる前で君の大事にしてた人達から28年の様子をいろいろ聞く事ができたよ。
  
 もう少し付き合いたかったな。また熱く語りたかった。
君は「もうこりごり」と言うかもしれないけど・・。